そのハムスターとわたし

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 ハムスターが来たことで、わたしの部屋は狭くなりました。ハムスター、タンスの目の前にいたので、服が少し取りづらい。あと、既にご高齢だったにも関わらず、彼はとても元気でした。夜行性なので、わたしが寝ている間、すぐそばで遊んで……いえ、暴れていました。夜中、そのせいで何度も目が覚めたほどです。  それまで、餌やりの頻度が一番高かったのは、比較的家によくいた母だったのですが、わたしの部屋に来てからは、もちろんわたしに代わりました。出勤前、いつもより少し早起きして、餌と水の準備をします。ハムスターも、わたしが起きると一緒に飛び起きました。  わたしが仕事から戻ると、夜行性のはずのハムスターは、大概いつでもぴょこっと顔を出してくれました。『おお、お帰り!』ですね。これがまた可愛い。  リビングにいるときは『みんなの子』でしたが、わたしの部屋にいると『わたしだけの子』になるんですよ。これは不思議で、また幸せな感覚でした。  部屋にハムスターがいると、不便なことも多いんです。さっき書いた通り、タンスの中の服が取りづらいし、夜中も寝づらい。夜行性である彼の体内時計を狂わせないため、消灯も早めになりました。日中は明るく、夜は暗くしないとかわいそうですものね。  また、コロナ禍のために趣味だった一人カラオケに行きづらくなったため、給付金をはたいて自室でカラオケが出来るような準備もしていたのですが、これも封印することにしました。確かにマイクにつける防音カバーも買いましたけど、部屋でうるさくしたら、ハムスターのご老体に障るでしょう?  そう、不便です。不自由です。楽しみは奪われました。とはいえ、そんなことも吹き飛ぶくらいに、ハムスターは愛しかった。  可愛かったんですよ。
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