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席に戻ると話していた薫と若菜は陽葵を笑顔で迎え、隣に座る若菜がそっと陽葵に話しかける。
「ちょっと…長かったわね。」
「ちょうど楓くんたち見つけてね。
2人楽しそうに何話してたの??
もしかして、若菜口説かれた?」
「んなわけないでしょ。
陽葵の昔の恋愛話よっ!ね、先生?」
薫がニヤニヤしながら私を見てて
ロクでもないことなんじゃないかと不安になった。
「ちょっとやめてよ!もしかして勇輝のこと?」
「そ、だって先生が、知りたいって言ってきたから
断りずらくって。」
「もう……まぁ終わったことだし良いけどね。」
勇輝のことは、楓と付き合ってからほぼ忘れていたし過去のことを振り返ることはしないようにしてた。
そんなことを知ってどうするのやらと薫の顔を見ると
楽しそうに笑っていた。
「陽葵の過去話ちょっと知りたいなぁなんて。なかなか聞けなさそうだから。」
「知ってどうするんです?」
「うーん、どんな人がタイプなのかなとか。」
「ふふ…適当ですね笑」
「そんなことないよ?笑」
そんな会話をしているとアナウンスが入り、開演時間となった。ざわついていた周囲の客も静かになり、着席している。
「皆さんお待ちかねの東華フェスティバルの、メインイベントになります音楽学科ライブが始まります!!いえーーーい!」
大きな声援で開始の合図が送られるとMCが紹介をしながら発表が始まった。1年生のグループから発表を始めて2年生はその後だが、1年生ですらどのグループもクオリティが高い。ゴスペルや金管バンドなど個性のある人たちだった。観客としても興味深く見れて3人とも楽しんでいた。
「ね、みんなすごいね!」
「お金取れるレベルよね。」
若菜も隣で拍手をして楽しんでいた。
「楓の方が上手いよ。」
「薫さんも楓くん大好きですね。」
陽葵もそんな薫の一言に笑ってしまった。
もちろん私もそう思ってるけどね。
「1年生は以上ですね〜。今年の1年生は個性があって驚くグループも多かったですね。次は2年生グループの発表になります。初めのグループは……」
いよいよ2年生組が始まった。
楓くんはどの辺かな……この発表で何かが変わる訳ではないけれど、今まで殻に閉じこもってた楓くんの成長の証のような気がした。だからこそ、すごく大切な時間だと思う。それを薫さんも感じてるんだろうな。
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