トラウマ

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 薫は急いで走らせ陽葵の自宅へむかう。途中電話をするも出ないことにより不安を強くさせる。遠くない距離なのにいつも以上に信号に止められているように感じ苛立ちを抑えられなくなっていた。息を切らして、やっと陽葵の家の前につくと無造作に置かれていたカバンとヒールに薫は一瞬凍りついた。拳を握り締めて玄関を開ける。 鍵もかけてないし、  かばんも靴も・・・ お願いだから陽葵じゃないで欲しい 「・・・・臭いな」 ツンと鼻にくる臭いに血の気が引くが薫はゆっくりと音のする部屋へ入る。薫は目の前で起きている出来事が夢のように感じ現実とは思えなかった。切り刻まれている陽葵の服が部屋中に散らばっていて、目の前で情事がなされていたことに目を疑った。一人で興奮する男の声と部屋中に漂う男の精液の臭いに薫は現実に戻される。目の前の男を後ろから殴ると驚いて立ち上がって向かってくるが薫の蹴りで気絶し倒れる。 「大丈夫か?」 「・・・」 薫は目の前の陽葵を抱きしめる。冷め切った体。 陽葵の一点を見つめる無表情の顔に言葉を失った。大丈夫かなんて言葉が彼女に響いていないことがすぐにわかった。 「ごめんな・・・俺がもっと早く、もっと止めてやれば!!」 「あ・・・薫さんきてたの。大丈夫だから心配しないで」  陽葵は笑顔なのに涙が溢れるようにでていた。薫はそっと大きなシーツで彼女を包みただただそばにいた。連絡をすると警察がすぐに駆けつけてきた。女性警察官につられ病院に連れて行かれる陽葵。しばらくすると薬を処方してもらい話をしに別室につれていかれた。 薫は待合室で座り込むと自分に腹が立ってずっとこうしていればよかったと繰り返すことしかできなかった。 病院にきてから何度も楓に連絡するも全く連絡が取れず知らせることもできていなかった。 なんであいつ全然でないんだよ・・・こんな時に 楓がいれば陽葵は・・・くそっ 「もしもし、いまから病院これるか??あ、理由はきてから説明するから陽葵がちょっとな。」 薫は同性の親友である若菜に連絡をした。女性のほうが安心するだろうと呼び出した。
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