トラウマ

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 「退院おめでとう、陽葵さん。」  「うん。ありがとう。」   手を伸ばしてくれた楓くんの手に触れようとしたら その瞬間にドクンと胸が締め付けられて 少しも触れることが出来なかった。 そっと手を引っ込める陽葵に 楓は笑顔で誤魔化していた。 「気にしなくていいからね! 僕は陽葵さんがそばにいてくれればいいから。」 「・・・ごめんね。 私って楓くんにとって 完全に足でまといだよね…」 「そんなこと言わないで? 僕はそんなふうに思ってないし 陽葵さんが好きだから」 最近の楓くんこんなに痩せて、心配かけて 何もできないこと、支えられないことが辛い こんなに痩せて…… 好きな気持ちは変わらないのに大好きなのに 私は楓くんのそばにいるだけの存在なのかな やっぱり今の私じゃ未来のある楓くんの荷物だよ… 普通だったら喜ぶ言葉なんだけれど 今はできないことが増えて陽葵は 楓にとって存在する意味がないように感じた。 被害にあった家には帰れず、しばらく若菜の家に居候させてもらった。若菜には長くいて構わないからと言ってくれてほっとしていた。仕事もしなくてはいけないのに未だに1人で発作と戦っていて、陽葵は焦りと上手くいかないことへの不満も日々積もっていく。
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