トラウマ

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 ボーッとしていると今から会えないかと薫から連絡があった。陽葵は誰かと話したい気分ではあったが発作がでたら迷惑をかけると思い断ろうと思った。しかし、若菜の家のチャイムがなった時には目の前に薫がいて断れない状況だった。 「ほら、行こう。ドライブに」 自然と手を引っ張られて乗せられる車。 「ごめんな急に。久しぶりだな。」 「あ・・・はい。薫さんも痩せましたね?」 私ってば今普通に話してるじゃんか 手を掴まれても震えないし どうして・・・ 「痩せたかな?まぁ忙しかったからな」 「楓くんも痩せちゃって・・・」 「まぁ、気にしなくていい。陽葵、俺といて怖くないか?」 「あ・・・それが全然怖くないっていうか発作がないんです。楓くんの時はあったのに。それで悲しい顔させちゃって。」 「楓もわかってくれてるよ。俺のオススメの場所連れて行くから」  勝手に進んでいく車はどれだけ進んだだろうか、気づくと窓から見えるのは海で夕日に照らされる姿がとても美しく感じた。 「着いたぞ。今日は思いっきり良いもの食べよう。」  連れてこられたのは海が見えるレストランであった。陽葵は男性がいる場所に不安があったが個室を用意してくれていた薫。 「気を使わせて、すみません。」 「いいから美味しいもの食べよう。」 運ばれてくるものがコース料理だろうか。洒落すぎなくて、緊張もあまりせず美味しい料理を食べることができた。食べている時も特に語ることもなく、窓から 見える海を楽しみながら安らかな時間を過ごせた。目の前の薫も笑顔で食べている陽葵をみて微笑んだ。 「もう、見ないで下さいよ。いきなり連れてこられて全然化粧もしてないんですから。」 「減るもんじゃないからいいだろうに。どんな陽葵でも笑ってくれたのが嬉しくて・・・安心した。」 「そうやって・・・薫さんに会うのも久しぶりでしたね。 私はずっと謝らなくちゃって思ってて、あの時助けてくださったのに・・・私は薫さんは自分を責めてるんじゃないかって心配してました。あの時はすみませんでした。今はやっと冷静に思い出すこともできてきたので少しは安定してると思ってます。」 「そうなんだな。俺もほっとしてる。  今日クリスマスイブだろ、楓とは約束してなかったのか?」 「えっ?今日ってクリスマスイブ・・・??」 陽葵は携帯をみると12月24日と表示されていた。 私、退院したりしてばたついてたら忘れてた・・・ 楓くんとも連絡とってなくて 可哀想なことしたな 付き合って初めてのクリスマスなのに 「クリスマスイブに俺といたら絶対に楓に怒られるぞ」 「本当ですよ!楓くん怒ったら怖いんですからね。薫さんのせいにしますから!」 「俺はかまわないけどな。楓は怖くないから笑」 「もう、なんですか!お兄さん、ちゃんとして」 自然と笑えている私 楓くんには正直に謝らないと電話でもしようかな 「でも、薫さんには感謝ですよ。ちょっと気分が落ち込んでて、久しぶりに心が晴れたような気がしました。楓くんに連絡しなきゃっ」 「楓、最近なんか言ってたか??」 「えっ?特に何も、ただ忙しいみたいであまり会えてはなくって。何かあったんですか?」 「いや・・・」 「ちょっとそこまで言われるときになるんですけど」 言いかける薫の言動に何か隠してるのではないかと 疑いの目でみる陽葵。 「いや・・・楓が歌手としてデビューすることになったんだ。」 えっ?? ちょっと、デビュー? すごいじゃない!! 知らなかった・・・ 「薫さん、初耳!いつから決まってたの?」 「あぁ、2ヶ月前くらいかな・・・」 2ヶ月前って結構・・・ それって私の事件くらいの時期。 そういえば あの時伝えたいことだか何だか書いてあった気がした。あれのことだったのかな。 楓くんは言えないでいたのかな・・・私もお祝いしたかったのに。 「楓くん大変だよね今。薫さんから聞いたこと内緒にしてた方がいいかな。私なにも聞いてなかったの・・・」 「・・・その反応は知らなかったんだと思ったよ。 楓も言ってくれると思うから待っててくれ。」 「うん・・・。 本当にすごいことだよ!デビューだもん。あぁ素敵だよね楓くん」 「それがな・・・俺もその件で事務所にいってきたんだが一つ言われたことがある。」 「何だったんですか?」 「あぁ・・・今交際している人と別れて欲しいってさ。身の回りを整理して欲しいらしい。」 別れる?・・・私と楓くんが? どうすればいいの・・・ たしかに本格的な歌手になるなら 邪魔なのかな私って。今でもすごく負担をかけてるって思ってるけど。それを他人から言われるとすごく辛い。そんな理由で別れるなんて嫌だよ。 だってもうこの人しかいないって思って付き合ってるんだから、本当に好きで今でも触れたくて、克服できるように頑張ってるのに。焦れば焦るほど上手くいかなくて。 「陽葵?・・・大丈夫か?」 薫はふと見上げる陽葵の瞳から涙がすっと流れるのが 見えた。すぐに何もなかったかのように表情が作り笑顔になる。 俺はなんてこと言ってしまったんだ。 やっと落ち着いてきた陽葵に 負担になるようなことを言って。 「薫さん、行こう。」 苦しそうに店を出る陽葵の表情は人形のようだった。
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