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2人の道
無言の車内。考え込んでいる陽葵に話しかけても空返事しかない。海からは次第に通り過ぎて行き、行きよりも長い時間乗っていたように感じた。陽葵を若菜の家に送り届けるとドアの前まで見送る。
「ごめんな。俺が余計なこと言ったから。」
「うんうん。きっと、いつかは言われることですし
、大丈夫です。ただ、楓くんがいざ側にいなくなるって思うとすごく嫌で・・・
あ、心配しないでくださいね。なんとかします。」
「うん。」
また泣き出しそうな陽葵。あの時みたいに無理に笑いながら話す姿をみた薫はあの時の光景が鮮明に思い出した。そう思ったら身体が勝手に動き、気づけば陽葵を抱きしめていた。
ーーーーーーーギュ
「薫さん・・・?」
「そうやって無理して笑わなくていいんだって。頑張らなくたっていいんだから。」
「だって、頑張らないと楓くんをもっと苦しめるし。私だってお荷物にはなりたくないから。」
「そうなったのは陽葵のせいじゃないだろ。自分を責めるのはやめろ・・・楓だって馬鹿じゃないからわかってくれるし、陽葵を守ってくれる。」
「うん・・・・ヒッ・・・ヒク」
薫の胸で泣いてしまう陽葵。背中をさすりながら落ち着かせる。少し落ち着いてくると薫は寒いから早く家で体をあっためろと言って家の中へ誘導する。
「なんかあったら、また連絡するんだぞ。じゃ。」
薫はそのまま帰っていった。
陽葵は玄関に入るとリビングで力が抜けたように座り込んでしまった。
私薫さんに抱きしめられたんだ・・・
でも全然怖くなかった。震えも来ないし何でだろう
楓くんには全然触れられないのに
ーーーーーーーーー
「ちょっと兄さん!!どういうこと?」
外では息をきらした楓が薫の胸ぐらを掴み
顔色をかえて怒鳴っていた。
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