2人の道

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 楓は1日の練習が終わりほっとしているとすぐに着替えて事務所をでる。今日はクリスマスイブだから 陽葵に早く渡したいと思っていたネックレスをコートの中に大切に持って若菜の家へ向かう。  陽葵さん、喜んでくれるかな。  初めてちゃんとしたプレゼントあげたくて  誕生日もお祝いできてなかったからなぁ  到着すると声がきこえ陽葵の声だとすぐにわかった。しかも泣いている声に見覚えのある声も重なって聞こえる。そっと近づくと楓は驚いた・・・陽葵が薫と抱き合っている姿を見てしまったのだ。驚いて一歩も動けないでいると薫はこっちに向かってきた。楓は咄嗟に薫の胸ぐらを掴んだ。 「ちょっと兄さん!!どういうこと?」 「ん?!・・・楓いたのか。」 突然、胸ぐらを掴まれた薫は驚くも冷静だった。 「なにしれっとしてるの?!」 「別に普通だよ」 「説明してよ!!僕の陽葵さんに何してるの??」 「・・・」 「なんで何にも言わなんだよっ!!どうしてだよ!  兄さん!」  ーーーーーーーードスっ  楓の声が響き若菜の家にいた陽葵まで聞こえてきた。考え事をしていた陽葵はふと我に返り、楓の声が聞こえるが様子がおかしいことに気づきドアを開ける。目の前には楓が両手の拳を強く握りしめて険しい顔をして、薫が殴られ唇の端から血が流れる頬を押さえて倒れ込む姿だった。 「ちょっと、楓くん!!どうしたの?!」 止めなくてはいけないと思い咄嗟に掴んだ手を楓は振り払う。  きゃっ 「陽葵さん!なんで兄さんといたの?! 実は発作なんて嘘なんじゃないの? 僕がどれだけ心配してるか知ってるの? どうせ兄さんのほうが良くなったんでしょ? 僕は・・・どれだけ・・・」 「楓くん、落ち着いて!違うの!そうじゃないんだってば!」 「知らない!!僕は何も聞きたくない!」 楓の勢いに負けないように必死に両腕を掴む陽葵。 「聞いて!!楓くん!私とお兄さんのことは誤解だから、私を苦しめないようにってしてくれただけなの。お願い・・・」 「だって今だって僕に触れてるよ?発作なんて、嘘なんでしょ?」 「・・・あっ。私やっと楓くんに触れられてる・・・楓くん!」 「僕はあんなに拒否されて苦しかったのに・・・そんな嘘信じないから。」 「嘘じゃないから!私、楓くんがいなくちゃダメなの!!」 「僕だってそうだった・・・さっきのを見るまではね 。」 両手で腕を払われた反動で膝を廊下につく陽葵。そんな陽葵を置いて去っていく楓。 「おい、楓!勘違いするのは勝手だけどよ、ちゃんと陽葵の話をきけよ。泣いてるだろ・・・」 「兄さん、人の女に手をだして、よく平然としていられるよな・・・最低だよ。」 「だから・・・楓。」 腕を掴み呼び止める薫の言葉に聞く耳も持たず歩き出す楓。その反動で上着の内ポケットにはいっていたネックレスが投げ出され陽葵の目の前に落ちた。 「これって・・・楓くん?」 「あ・・・それ好きな人にあげようと思ってたやつだけどもう必要なくなったから捨てて・・・」 「楓くんっ!!私が悪いの!お願い・・・戻ってきて 話をきいて!」 「僕はそこまでやさしくないよ。」 初めてだった楓くんがここまで怒るなんて 聞いてもくれない上に発作も嘘だと思われちゃった・・・やっと楓くんに触れられたのに。 これじゃ楓くんにとったら最低な女ってことだよね。・・・もう謝るチャンスもないのかな。 目の前に落ちたネックレスを手に取ると 楓をかたどった飾りに小さいダイヤがあしらわれているものだった。 「すごい綺麗・・・楓くん。ありがとう・・・捨てられないよ。こんな素敵なプレゼント。」 手に握りしめると泣き疲れるくらい泣き続けた。 そこに寄り添ってくれた薫はひたすら謝っていた。 ーーーーーーーーーグスっ 言い捨てて勢いよく去っていった楓は走って自宅のベッドにこもった。冷静になると悔しさややっと触れられたといって泣いていた陽葵の姿を思い出した。 あの陽葵さんの悲しい顔初めてみた・・・ 僕を好きでいてくれたってことなのかな。 嘘じゃなかったのかな・・・ 本当は信じたかった。でも、これ以上傷つきたくなくて追い払ってしまった僕って最低だよね。 僕だって苦しかったんだ。 これからもずっと大切にしていきたいって思ってたのに・・・  薫が家に帰ってもしばらく楓は部屋にこもっていて顔を合わせることはなかった。何度も誤解を解こうとするが聞く耳をもたなかった。それでも時間はすぎ、変わらない毎日が過ぎていく。
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