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陽葵はsugarの曲を聴きながら勉強して帰るのが日課になっていた。珍しく、電車通勤をしていた陽葵は駅を歩いていると後ろから知らない男性に声をかけられる。肩をそっと触れられ、ゾッとした。
「キャッ!!」
「つい、綺麗な方だと思ってすみません。声をかけたんですが全然気づいてくれたにみたいだったから。」
触れた男性は驚くというよりは震えて怯える陽葵から
そっと手を離して謝っていた。
やっぱり知らない男性に話しかけられる時に時々発作まではいかないが怯えてしまうことがあった。
「大丈夫です。すみません驚いちゃって。」
「いえ、急に話かけたらそうなりますよね?あはは」
男性は去っていく。
ーーーーーーーーーー
楓は社長に歌うことに疲れを感じることを相談すると洋介からも聞いていたのかしばらく休んでもいいと許可をもらった。もちろんすべて決められた仕事は済んでからという条件だったが。楓はやっと残された仕事を終えて家に帰る。
あの頃、陽葵さんに似合う男性でいたくて
整えていた髪も今は伸ばしっぱなしで整う気力もわかない。あんなに好きだったギターを弾くことがストレスに感じていた。
帰っても会話もしない兄さんに当たり散らして最悪だね僕は・・・
楓は家までの道をゆっくり歩いていると見覚えのある姿に目を開く。
あれは……陽葵さんだ
見たかったその姿に胸を締め付けられた。陽葵は男性に話かけられ明らかに怯えていた。少し会話をすると震えは止まっているようだったが両手で自分を守るよう縮こまる姿に楓はまだ怖いんだと実感した。
やっぱり・・・陽葵さんは嘘なんてついてないんだよ
僕はなんてひどいことを。
あんな被害にあって毎日怯える自分と戦って
やっと僕に触れられたこと喜んでたのに追い払って
傷つけた。最低だ・・・僕には陽葵さんに声をかける資格すらない。
黙って家に向かう楓は悔しくて涙がでてきた。
足早に家に入ると薫が珍しく家にいて驚く。
「楓、手紙がきてるぞ。部屋に置いといたから」
コーヒーを飲みながらリビングにいた薫から
話しかけられると頷いて部屋にいく。
ーーーーーーー楓くんへ
宛名の書いた封筒は裏に大好きな陽葵さんの名前が
書いてあった。僕に書いてくれたんだ。あれからメッセージも勢いでブロックしてしまったから・・・。
楓は封筒を開けると綺麗な字で書かれた手紙を読むと 自然と涙があふれてきた。陽葵が書いた文字が滲んでいく。
陽葵さん・・・僕ってどうしてあの時
ちゃんと聞かなかったのかな。
一人で勝手に疑って悩んで本当に最低だね。
sugarとして音楽をしていても
僕は楓として陽葵さんのそばにいたら良かったんだ。離れる必要なんてなかったのに・・・忘れようとしても全然忘れられなくて今は音楽でさえ嫌になって逃げてる。
僕にとって陽葵さんが全てだってこと、
自分が1番わかっててずっと大切にしたいって思ってたのに。
陽葵さんはいつでも僕のこと思ってくれてたのに子供でごめんね
ーーーーーーバタンっ
楓は涙を拭いながら、リビングにいる薫に声をかける。
「兄さん、陽葵さんのこと好きなの?」
「なんだいきなり。」
「付き合ってるの?」
「んな訳ないだろ・・・
陽葵はずっと楓しかみてなかったよ。
何があっても楓を一番に考える女だろ?」
「僕が馬鹿だった。兄さんごめん・・・今更謝ったって遅いけど陽葵さんが悲しむことだけはもうしたくない。」
「お前気づくの遅いんだよ・・・。
陽葵は俺にしとけば幸せになれたのにな。」
と笑う薫。
「絶対僕が幸せにするんだから、兄さんに渡さないかよ。」
「あぁ、そうだな。よろしくな楓。」
頼りない僕でごめんね。
僕は変わりたい…
今度こそ陽葵さんを守れる男になるからね。
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