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「誕生日おめでとう、真希沙。これ、プレゼント」
「ありがと、凪!」
手渡した包みを開いていく真希沙は、弾む気持ちを抑えられないと書いてあるような満面の笑みを浮かべている。
「・・・わ、すごい! 素敵!」
うやうやしい小箱に詰められたネックレスを見て、無邪気に喜ぶ真希沙。ふんわりと空気を含ませたボブカットの髪が上下に揺れるくらいにはしゃぐ姿は、オトナの女性とは言いにくいが、少女の頃のままの純粋さを保っているとも言える。その様子を隣で眺めるシロウさんは、苦笑いを浮かべながら、ハイボールの注がれたグラスに口をつけた。
「これ、高かったんじゃない?」
「大事な大事な、真希沙のためだもの。ちょっと奮発しちゃった」
「わー、嬉しいな。すっごく大事にするね」
うん、きっとしてくれるよね、知ってる。いつも何でもちゃんと、身に付けたり、使ったりしてくれているもの、あなたは。
「でも真希沙、せっかくの誕生日なのに、シロウさんと二人きりじゃなくて良かったの?」
「うん、だって、凪は特別だもん。ね?」
私の問いかけに何の逡巡もなく答えた真希沙は、付き合い始めて二か月の年上の彼氏に同意を求めた。
「前回会わせてもらったときから、いやその前からずっと話を聞いているから、よくよくわかってるよ。気にしないで、凪さん」
「ほらほら、公認だもーん。というか、むしろ、凪のほうがシロウさんを公認する側だよね。ずっとずーっと長い付き合いなんだから。もはやステディと言ってもいいくらいのカンケイなんだからさ、ねー、凪?」
「あんた、ほんとの彼氏を前にして、よくそんなこと言えるね」
「ははっ」
シロウさんはまた苦笑する。子供っぽいところの抜けない真希沙を、困ったやつだなあと思いながらも優しく見守る、大人の余裕を醸し出している。今まで真希沙が選んできだ相手とは、だいぶ毛色が違う。私も付き合ったことのないタイプだ。
今までの真希沙は、一緒に盛り上がれる、ノリのいい元気なキャラを選ぶことが多かった。
中学では、サッカー部の同級生。高校では、バイト先のちょっとチャラめの先輩。大学では、熱烈にアプローチしてきた後輩。社会人になってからは、職場の別部署の体育会系。あとは・・・まだ誰かいたっけ。いたような気もするが、忘れてしまった。みんな例外なく付き合い始めのうちに、真希沙のセッティングにより「顔合わせ」をさせられてきたのだけれど。
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