あなたへのプレゼント

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私がいないと何もできない、なんてわけでもないのに、真希沙は昔から何をするにも、私に関わってほしがった。中学一年で転校してきた当初、クラス委員だったために何かと世話を焼いていた私としかコミュニケーションをとっていなかった時期があって、それがどうも強烈な原体験になっているらしい。 人見知りはするものの、生来明るい気質だった彼女は、その後は少しずつ友達の輪も広げ、さらには前述のわりと人気者だったフォワードの彼と付き合うまでになった・・・のだけど、いちいち私に「髪型は短いほうが好きだよって言われたんだけど、凪はどう思う?」とか、「今日は一緒に帰れなくてごめん、明日は凪と帰るからね」とか、なぜか彼女の中に占める私の比重は、彼氏ができてもあまり変わらないらしかった。そんなだから、当然の帰結として、彼とはすぐにうまく行かなくなってしまっていた記憶がある。 そんなわけで、真希沙の交際はいつも長続きしない。原因は、たいていの場合は私というか、彼女との奇妙で強すぎる関係にあると思う。 相手は私のことを恨んだりしているんじゃないだろうか、と思うこともあるし、恨まれても仕方ないような気もする。ただ、そうであっても、私にとって真希沙は大事な親友であることは変わらないし、いつも頼ってもらえることそれ自体は嬉しいと感じているから、何とも難しいところだ。 そして、いつも激しく落ち込みまくる真希沙に、私はいっそう密に付き添い、なだめ、元気になるまで甲斐甲斐しく世話を焼くことになるのだった。 シロウさんには、もはや最初から「私と付き合うならまず会ってもらいたい相手がいる」なんて宣言していたという話を、一か月前の「顔合わせ」のときに真希沙から聞いた。そして彼女は、いつもそうするように、中学時代からの私たちのエピソードを延々としゃべり続けた。 内心どういう気分だったかはわからないけど、シロウさんは時折その口髭に指を当てたりしつつ、ちゃんと頷きながら、別に大それた出来事などない二人の思い出話を聞いていた。年上だからこその余裕、も当然あるのだろうけど、たぶん単純に優しくて包容力のある人なのだろう。なかなかいい人を見つけてきたな、なんて言うとちょっと上から目線だけど、そう思った。
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