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出会ってからずっと、私にべったりだった真希沙。
文房具も、アクセサリーも、なんでもお揃いにしたがって、嫌ではないけど困った子に好かれたなあ、なんて思っていた。・・・はじめのうちは。
私に依存しきっていると言えるほど懐かれて、それだけ純粋で真っすぐに向けられる彼女の好意が、いつの間にか当たり前の存在になっていて。
気が付くと、依存していたのは、私のほうだった。
予備校も大学も、真希沙が選んだところに合わせた。真希沙が新しいキャラクターグッズにハマって買い始めると、私も気になって、同じキャラを揃えた。真希沙が好きになったものは、何もかも知りたい。手に入れないと、気が済まない。新しくできた友達も。新しくできた、恋人も。
シロウさんも、もうあと何度か揺さぶれば、手に入りそうだ。
はじめはだいぶ年も上だし、難しそうに思えたけれど。真希沙の誕生日プレゼント選びの手伝いをする名目でこっそり会う約束を取り付け、ショッピングでそれとなく気のある素振りを見せて、なし崩しに食事まで押し切った時点で、ある程度、見込みはついた。「私のほうは振られちゃったばっかりなんです」「こんなに楽しく話せた男性は初めて」「先に出会えれば良かったな」・・・嘘ばっかりだけど、それっぽい言葉をつぶやきながらじっと見つめると、目に見えて、ぐらついていたから。
年上で経験豊富だろうとも、髭を生やして余裕ぶった態度を決めていようとも、だいたい響くポイントは同じあたりで、決壊するまでの強度もまた、同じくらいらしい。バイト先のちょっとチャラめの先輩も、熱烈にアプローチしてきた後輩も、別部署の体育会系も、あとは誰かいたっけ。いたような気もするが、忘れてしまった。
とにかく、「恋人の親友」という懐に入りやすい立場から同じように押していけば、「恋人の親友」という倫理観は、割合、簡単に壊せるものらしかった。
ごめんね、真希沙。
私はあなたのすべてを得ないと、満足できないの。
新しい恋人との幸せな姿も、もちろん、素敵だけれど。
身を預けた相手を喪って、哀しみにくれる姿も、私は欲しいの。
意気消沈したあなたに寄り添って、慰めて。
また前を向こうと健気に立ち上がるまで傍にいたいの。
あなたの感情のすべてを、隣で見届けていたい、ただ、それだけ。
真希沙。
真希沙。
真希沙。
私は、誰よりもあなたに近しい存在でいたい。
ネックレスだって、あの男に買いなよと薦めたものより、私があげたもののほうが、あなた好みだったでしょう?
あなたのことは、全部、わかっているんだから。
私以上に、あなたのことを知っている人間なんて、いないんだから。
すぐに、私のプレゼントだけしか身に着けられないようにしてあげるからね。
どんな顔を見せてくれるか、楽しみだなあ。待っててね。
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