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「いつまでもヘソ曲げてんじゃねえよ」
「…………」
「おい」
「…………」
「道哉」
「…………俺はもうお前を居ないものとみなしている」
呟いた一言に恵太はうんざりと溜め息をついた。
どこのガキだ。蔑んだような眼差しと共にそんな一言を投げつけられて、俺がブチ切れたのは三秒後。
そもそもこの思いやりゼロパーセントな男とは昔からウマが合わなかった。
視線が絡めば睨み合いになり、すれ違えば取っ組み合いになり、言葉を交わせば殴り合いに発展していた高校時代。
あの頃に比べればお互いマイルドになったものの、未だに喧嘩三昧の日々を送っている事に変わりはない。
体を繋げている時でさえ、それぞれから出てくる言葉は罵詈雑言に、恨みに辛みに。その他諸々の悪感情だ。
死ねとか殺すとか言い合いながらそれなりの頻度でセックスしてる。俺は恵太で体内を満たし、恵太は俺に欲を吐き出す。
心の底から馬鹿げていると自分でも思う。思いながらもここまで続けてきた。
この男に今さら何を求めたところで無駄だという事くらい重々承知しているから、この関係が良い方向に進むことはないのも分かっていた。そんな気色の悪い方向にはそもそも俺が進めたくない。
俺達は付き合っている訳じゃない。恋人同士なんかじゃない。
そんな可愛らしい関係を、今後結ぶつもりだってない。
一緒に住んでいるのはあくまで単なる節約のためで、体を重ねるのは性格不一致でもセックスの相性は良かったからで。
俺は恵太が嫌い。恵太も俺が嫌い。
その前提が崩れる事は、一生かけても絶対に有り得ない事だと知っている。
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