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──蝋燭に灯った火が、小さく揺らめいている。
四面楚歌、という言葉を聞いたことがあったが、本当にその通りだ。
周りは自分の存在を認めず、無意味にしようと、悪意が濁流のように押し潰そうとしてくる。
それらを相手に、自分は気が遠くなるほどに立ち向かい続けていた。
降り注ぐそれらに負けないよう、折れそうな膝を必死に、必死に立たせて地を踏みしめる。
『負けるな。キミは強い。きっと、誰でもない、キミ自身が、誰かを守れるくらいに』
──誰の言葉だったか。独りぼっちの誰かに向けた、ありきたりなエールが、不思議と胸の奥から力をくれる。
──そうだ。自分はまだ止まれない。退くな、ゆっくりでもいい、進め。
もし一歩でも退けば、自分はきっと死ぬよりも後悔する。自分のこの想いだけに嘘を吐くのは、死んでも御免だ。
だから、この折れそうな心を引きずって、自分は進むのだ。一歩ずつでも、やらなくてはならないのだ。
「──あ」
──ふいに抜けていく風が、蝋燭の灯火を吹き消した。
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