虚しい注意、確かな警告

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 〇〇賞作家、ベストセラー作家。そんな風に作家としての箔が付き始めると、日本語のプロ、文章のプロとして講演会やイベントに呼ばれるようになった。それなりに小説を読む人なら私の文章が決してうまくないことには気付いているはずだ。つまり私の言葉に耳を傾ける聴衆は、真剣であればあるほど私の愛読者ではない、と分かった。大体、私の作品を好きな読者は、褒め言葉の中にも、「説明っぽい文章が玉に瑕だけど……」のような評価を挟みがちだ。どうせ彼らは私の著作なんて買わないのだから適当に話せばいい。それでお金が貰えるのだから、真面目に小説を書くなんて馬鹿らしい。肩書きの威光が役に立たなくなるまでは、これに頼りたい限りだ。そう思っていた。
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