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乾燥する空気に震える肘を庇いながら、人出のない大通りで彼を待っていた。
このご時世だ。
3年前なら人で溢れていたこの街も、今や数えられるほどしか視界には入らない。
通り行く人々は、モコモコとした防寒具を身に纏い、下を向いて足早に進む。
待ち合わせなんていつぶりだろう。
今や待つ必要なんてないのに、私は彼を待つことに決めてここに立っている。
昨日のビデオ通話で、久々に会わないかと提案してきたのは彼だ。
どうして?と聞いた私の言葉に、彼は笑うだけで返答はなかった。
その代わり届いたのは、恋人なら聞くことがあるだろう言葉。
「ねえ、今でも俺を愛してる?」
どうして今、そんなことを聞くのだろう。
画面の向こうに見える彼に異変は感じられないのに、なぜ、そんなにも悲しそうに笑うの?
「……なにか、あった?」
尋ねた言葉は震えてなかっただろうか。
笑顔を伏せてうつむく彼は静かだ。
なにかあるなら、言ってほしい。
「ねえ、透子。助けてよ」
「え?」
「宅配便が、来ないんだ……」
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