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「宅配便?」
彼が黙って頷くと、栗色の柔らかい毛が宙で遊んだ。
「え? そ、それは待っていたら良いんじゃない……?」
「頼んでも来てくれない」
「頼み方が悪いんじゃなくて……?」
彼はこんな時代だと言うのに、機械に疎いところがある。
私とこうやって会話するためのパソコンや回線を用意するのも、電話であれこれ説明したお陰でどうにかなっているのだ。
「透子は機械に強いから知ってるよね?」
「宅配便と機械は関係ないと思うけど……」
「透子はしてないの? オンライン宅配便」
「オンライン宅配便……?」
宅配をお願いするのはオンラインが当たり前だと言うのに、彼はなにを言っているのだろう。
私が黙っていると、彼はため息をついた。
彼は沈黙を嫌う。
自分にとって嫌なことがあると、あからさまに態度に出してくる。
「ちょっと待って、調べるから」
キーボードに指を落とし、一番上に現れた検索結果をクリックする。
悪趣味なほどド派手なロゴに、貼り付けられた笑顔の写真が並ぶページが表示された。
……どうやら定額制のサービスらしい。
「贈り物が多い人には、い、いいんじゃない? 私は、あなたから贈られたことないけれど」
少しばかりの皮肉くらい許してくれるだろうと、私はつんとした態度をとった。
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