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ある夏の奇妙な記憶について、記したいと思います。
これは、小山田少年、つまりは子どもの時分の私の体験にまつわる記憶なのです。しかし、当の私をもちましても、この記憶が本当のものか、嘘のものか全く分からないのです。というのも、あまりに奇妙で、現実味のない出来事でして。夢か何かで見たものを、現実の記憶と混同しているのかもしれません。夢だ、と言ってしまった方が、理屈としては正しいのでしょう。それは分かっているのです。しかし、そう片付けてしまうには、あまりにも私の中で、あの記憶は鮮明で、質量を伴ったものなのです。だから、夢だ、そう言って忘れてしまうのが妥当だと、理屈では分かっていても、どうにも私の実感が、それを許してはくれないのです。本当にあれは、ただの鮮烈な夢だったのか。それとも、奇怪な現実だったのか。
あるいは、私はこうも推察してみました。
幼い頃の私は、色々な生き物が好きでした。それで、よく何かしらの生き物……蝶の子どもや、蛙などでしたね、それらをよく外から拾って帰ってきては、飼育していました。しかし、至らなさ故に、途中で死なしてしまうことも少なくはありませんでした。そのような小体験によって、少なからず、幼い私の中には罪悪の念が芽生えました。その微かな罪悪の念が、やがて同じような体験を重ねるごとに、蓄積し、氾濫し、自戒として、あのような奇怪な話を記憶の中に作り上げたのかもしれない。まあ、これも一つの推測で、何も確信はありません。
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