IF case.001 シラノハ、憑依スル。デモ思イハ、伝ワル。

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IF case.001 シラノハ、憑依スル。デモ思イハ、伝ワル。

※この小説は「Project COLD」の即興二次創作小説です。本編のストーリー及び設定を遵守していない内容を含む場合があります。それが嫌な方はブラウザバックを推奨します。 設定: 劇団あかぐまでの劇が、実は儀式だった。 奈々乃がシラノに憑依されるルートでのハッピーエンド展開。 ========= THAWING ========= 油断大敵とよく言いますが、その時のわたしは完全に油断をしてしまっていたのです。 「……やめて。やめて!!何か、何かが頭の中這いずり回って」 ーー呪いは全て、終わったのだと。 「……いやぁあああああああああ!!!!」 悲鳴。 舞台の中央で赤いクマの格好をした綾城奈々乃は、絶叫とも取れる声を劇場内に轟かせた。 「奈々乃ちゃん?!」 わたしは異常な光景に思わず声を上げ、椅子から立ち上がる。 「玲子ちゃん、アレって……」 嫌な予感と共に、首筋を冷たい感覚が撫で回してくる。 「……どうやら私たちは勘違いしていたみたい」 青島玲子は一言呟くと、辺りを見渡す。 すると、客の誰しもが目を輝かせて舞台を見ていた。 誰も演技ではないと疑っていないらしい。 「どうしよう」 「私はスタッフの人に言いに行くから森さんは綾城さんのところへ!」 「う、うん……わかった!」 転びそうになりながらも、客の前を横切りながら舞台へと向かう。 気がついた頃には舞台の上に上がっていた。 「い、いち……ご、きちゃ……ダメ……」 苦しみながら奈々乃は言う。 だがその言葉に、私を抑えていた糸がプツンと切れた。 「ふざけないでよ!!」 「……っ!!」 劇場に響き渡る怒声。 私の声、こんな声だったかな。 「いっつも、いっつも相手の気持ちも考えないで、自分の事ばかり頭いっぱいで、本当になんなの?!」 こんなこと言っちゃダメなのに。 「わたし、嫌いだったんだよ。ずっとずっと。高校で再会して何か変わったのかもしれないとか思ったけど、何にも結局何にも変わってなかった」 ダメ。これ以上はダメ。 「サボるために掃除を押しつけてくるところが嫌い。相手の気持ちを分かってもないくせに勝手に決めるところが嫌い。何ごとも自分中心で周りのために動くつもりが一切ないところも嫌い。……本当に嫌い」 「……ごめん」 「謝らないでよ!!」 もう、自分でも何言ってるのかさっぱりだ。 でも自信を持って言える。 私は…… 「わたしは、笑顔で漫画の話をしている奈々乃ちゃんが好き。自分勝手でも、わがままでも、やりたいことをやっている奈々乃ちゃんが好き。そして……劇団のことを生き生きと語る奈々乃ちゃんが好き」 だから。 「本当の思いをわたしたちに話してよ!笑って誤魔化したりしないでよ!お願いだから本当のあなたを見せてよ!!」 「……」 静まり返るホール。 状況は理解できていないが、観客は感情を具現化したような白熱した光景に、思わず息を呑んで見守る。 「……ちゃんと話せるじゃん」 「奈々乃ちゃん……」 「ああもう、何が儀式よ。何がシラノよ!!本当……バッカばかしい。いちご?よく好き勝手言ってくれたわね。あとで覚えておきなさいよ?」 「えっ。あの……な、奈々乃ちゃん?」 綾城奈々乃は立ち上がると叫んだ。 「シラノなんてただのオカルト……私は絶対に認めなあああい!!」 その瞬間、目の前で爆発したのではないかと思うくらいの衝撃が走った。 彼女の体から発光する何かが飛び出し、空中で散っていく。 そして、綾城奈々乃の身体は崩れ落ちるように倒れた。 「綾城さん?!」 舞台袖から青島玲子が聞いたことのない大声を上げた。 「(玲子ちゃん……良かった。これで何とかなるのかな……あれ?なんか気が抜けて)」 そんな光景を見ながら、私の意識も途絶えた。 ーーーー 気がつけば知らない天井だった。 えっと……何がどうしてこうなったんだっけ。 確か舞台の上で劇をしていたら、台本にない儀式とかが始まって、それで……。 身体を起こそうとすると、何かが乗っかっていることに気がついた。 目をやるとそこには、白くて小さな小動物みたいな奴が、寝息を立てながら寝ていた。 「本当……何を考えてるんだか」 「……んっ……奈々乃ちゃん?」 「ん。おはよ!いちご」 私は笑顔で答えた。 ーーーー 「玲子、調子どう?」 「だいぶ良くなったみたい」 後から聞いた話だが、隣の病室で玲子も入院していたらしい。 なんでも倒れた私といちごを1人で運び出そうとしたら、足を挫いてそのまま倒れ、その時に右足を骨折。 幸い神経には異常は無かったらしいけど、そんなことを聞かされても、意外過ぎて想像ができない。 むしろそれが面白くもある。 「何?じろじろ見て」 「別に?まさかあれだけ冷静で生真面目すぎる玲子が、取り乱して考え無しに行動するとはね……くすっ」 「しょ、仕様がないでしょ。誰だってあの光景を見たらああなると思う」 「でも骨折って……ははっ」 「綾城さん。これは全て綾城さんの責任だから。あなたがここの入院費払ってよ?」 「ごめん。嘘だからー。それだけは勘弁して……」 優しく扉が開く。 アイツのお出ましだ。 「玲子ちゃん!具合どう?」 「だいぶ良くなったみたい」 「そっか。良かったぁ。その、わたしたちのせいで……ごめんね?」 「森さんはもういいのよ。森さんはね」 青島玲子は私の方を真っ直ぐに見つめてくる。 その目には、期待も希望もこもっていない。 「別に私は悪くないから!悪いのは玲子だから!」 「そうね。私が悪かったから、入院費はよろしくね」 「だからそれは!」 「2人とも……ここ病院だから。もう少し静かにしないとーー」 「すいません。隣の部屋から話し声がうるさいと言われている為、少々小さくしていただけないでしょうか」 「ごめんなさい!」 「失礼しました」 「すいませんでした!」 こうして、私達の日常は戻ってきた。 ……今はそう、信じようと思います。 Next Stage...
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