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慣れた手つきで後ろを解され、気持ちは困惑していても体はすっかりいつも通りの反応を始めてしまう。だけど、こんな気持ちで抱かれたって、虚しい。そうは思っていても、先端がぴたりと当てがわれると、それだけで静流の腰は反ってしまうのだった。
「いやだ……紫苑」
いつもの相手と、いつもの手順で、いつもの行為。なのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。
揺さぶられながら、頭の中はすっかり冷え切ってしまっていた。繋がった部分はいやらしい音を立ててはいるけれど、全然気持ちよくなんかないし興奮もして来ない。さっさと終われ、頭の中はそれしかなかった。
ゴーン
つけっぱなしだったテレビから除夜の鐘が聞こえてきた。鐘の音を聴きながらセックスだなんて、と静流はますます萎えた。だが紫苑は人の気も知らず余裕のない顔で腰を振り続けている。
やがて静流は終わりの予兆を感じた。中に埋め込まれたものがひときわ膨れ上がり、紫苑の速度もスピードを増す。はいはい早く解放してくださいよ、なんて思いながら揺れる視界の中天井のシミを眺めていると、テレビから新年の挨拶が飛び交い始めた。
「皆さま、新年明けましておめでとうございます!」
「たった今、新しい年がスタートいたしました!」
お祭り騒ぎのテレビをBGMにただただ揺らされていると
「っくしょー、間に合わなかった……」
紫苑が今夜帰ってきて初めて発した言葉。
「な、何が?」
「アレだよ、年明けと同時にイキたいなって、さ」
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