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華井さんと狩南さんは、早速スマホで知り合いの上級生に連絡を取ってくれる。その上級生の先輩に桃弥のことを知っているか聞いて貰う、というやり方で情報収集をすることにしたのだ。
「ん~でもこれだと時間かかっちゃうねぇ」
華井さんが、スマホで文字を打ちながら溜息を吐く。
「いや、全然、大丈夫です! ありがとうございます」
頭を下げていると、少し離れたところで電話している狩南さんが戻って来た。
「てか、思ったんだけどさ。うちらで探しに行けば良くない?」
「えっ……」
「探すってぇ?」
「この辺りの墓地に片っ端から行けば、見つかるでしょ。うちの高校の近くに住んでいた可能性の方が高いし。なかったらまぁ、そん時で」
私は慌てて両手を顔の前で振った。
「いやいや、そこまでして貰うのは流石に……」
「何。じゃあ、諦めんの?」
思わず口を噤んでしまう。すると、ぷっ、と華井さんが吹き出した。
「どうしたのぉ、狩南。キャラ変~?」
おちょくるように言う華井さんに、狩南さんは深く眉間に皺を寄せると、目を逸らす。
「別に……」
それから、蚊の鳴くような声で言った。
「悪かったわよ。今まで」
私と華井さんは、目を合わせる。
「人って変わるもんねぇ~」
そして、夏休みが始まる。
私達は、毎日のように青空の下を自転車を漕いで探し回った。私は自転車を持っていなかったから、華井さんと狩南さんの後ろに交互に乗せてもらっていた。罪悪感はあったけど、そのうち、楽しさが上回った。
眩し過ぎるくらいの太陽の光が、いつでも私達を照らしていた。
何度も何度も、同じ道を行ったり来たりして、時には逸れ、時には転び、三人で手を取り合った。
一度、狩南さんが連絡を取ってくれた先輩から連絡がきて、桃弥のお葬式に出たことのある人が見つかった、とのことだった。その人は、直後にお墓参りに行ったことがあって、大体の場所を聞くことが出来た。
そして、ついに――
「あった!!!!」
桃弥のお墓を、見つけた。
仙二桃弥、と名前がしっかりと刻まれていた。
他のお墓と比べると一回り小さく、誰も手入れしていないようだった。雑草が好き放題生えていて、泥がこびりついている。酷い有様だった。
私達は、すぐ近くにあった大型スーパーに行き、バケツや雑巾などの掃除道具、ロウソク、ライター、花を割り勘して買った。
みんなでお墓を綺麗にし、ロウソクを立てる。
相変わらず、太陽が燦々と降り注いでいた。
私は、沢山の向日葵を花瓶に差す。
これが、あなたに一番似合う花だと思ったんだ。
華井さんと狩南さんは、待ってるから、と少し離れたところに行き、私を一人にしてくれた。
光を反射して輝くお墓の前に座り、静かに手を合わせる。
桃弥。
私、今、凄く幸せだよ。
あなたに貰った温かさを、一生忘れません。
今、私の周りには、私を思ってくれる人達が確かにいます。
その人達がずっと笑顔でいれるよう、精一杯、胸を張って生きていきます。
あなたに貰った勇気で、それだけは、諦めません。
ふっ、と頬を緩め、仙二桃弥、と刻まれた名前を見る。
「愛してます」
それだけ言うと、私は、笑顔で待ってくれている二人の元へ駆け寄っていった。
了
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