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私は小学生の頃から、お母さんの妹さんにお世話になっていた。お母さんの実家で、二人で暮らしていたのだ。けど、妹さんは、私が高校に進学するタイミングで結婚し、遠く離れた大阪に行くことになった。それで、お父さんは私を受け入れるしかなくなってしまった。……大嫌いな、私を。
後ろから車の音が聞こえてきて、端に寄る。狭い道だから、車は私の横のスレスレを通っていく。水飛沫も上げずにゆっくりと走っていったけど、それでも冷や冷やしてしまう。
お母さんが交通事故に遭って亡くなった時も、こんな日だったのかな、とぼんやり思う。私を庇ってくれた、とお母さんの妹さんから聞いた。けど、その瞬間の記憶はない。三歳の頃だったらしいから、単に幼すぎて覚えていないのかも知れないし、脳が都合よく処理しているのかも知れない。そのどちらのせいもあるのだろうとも思う。
ただ……どうしてか、お父さんの目はよく覚えていた。病院で、お母さんが眠っているベッドの横で、泣きながら私を睨んでくる目を……。
この記憶は、本当は、やけにリアルなただの夢かも知れない。最初はそう思っていた。けど、お母さんは私を庇って交通事故に遭ったのだと聞いてから、確信したのだ。
そうか。あのお父さんの目は、私のことを責めていたんだ、と。
幼いながらにショックだった。
不意に、あのお父さんの目を思い出す度、どうしてお前が……と勝手に声まで聞こえてくるようになった。
目だけで、こんなに傷つくのだと知った。
それから私は――人の目が怖くて見れなくなった。
ずっと、今も。変わらないままでいる。
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