Book12「執(しつ)恋」

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ごはんを食べ終え、二人で片付けたあと、 「……じゃあ、櫻子、行こうか」 シンちゃんが、陽だまりのように微笑みながら言った。 わたしは、こくり、と肯く。 警察に被害届を出しに行くのだ。 わたしはシンちゃんのほっぺたに、シンちゃんはわたしのくちびるに、お互いに「行ってらっしゃいのチュウ」を済ませると、わたしたちは手をつないで玄関を出た。 ……うーん、なんだか「二度手間」な気がするのはわたしだけだろうか?シンちゃんのチュウだけで事足りてるのではないか? 門扉の向こうには、世間話で花を咲かせまくってお花畑の中にいる山田のおばちゃんと中村のおばちゃんがいた。 わたしたちのつながった手をガン見しながら、 「「あらあら、新婚さんはいいやねぇ」」 と、声を合わせた。 でも、もう後ろめたい気持ちに脅かされることはない。 だって、わたしたちは、 ……心もカラダも通い合わせたのだから。
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