Book12「執(しつ)恋」

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「これから、二人で警察に被害届を出しに行ってきます」 シンちゃんがまるで「ちょっとスーパーに買い物に行ってきます」とでもいうくらい気軽に言った。 「そうだよぅ、それがいいよ。櫻子ちゃん、あんなに怖い目見たんだもん」 中村のおばちゃんが(いたわ)ってくれる。 「櫻子は昨日で図書館を辞職したので、これから日中は一人で家にいることになります。 僕が仕事でいない間、櫻子のことをよろしくお願いします」 シンちゃんが打って変わって神妙な面持(おもも)ちで、頭を下げる。 「やだねぇ、なに言ってんだよぅ」 山田のおばちゃんが水くさいとばかりに、手をぶんぶん振る。 「櫻子ちゃんは娘も同然だかんね。シンちゃんよりも、あたしらの方がずぅーっと付き合いは長いんだよ」 山田のおばちゃんも中村のおばちゃんも、ギャハハハハ…と豪快に笑った。
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