Book12「執(しつ)恋」

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「……先刻(さっき)、警察の人にね、 『不安なときはできるだけ家族に迎えに来てもらうか、タクシーなどを利用してください』 って言われたんだけど」 家に帰る車の中で、わたしはシンちゃんに言った。 「わたしには家族もいないし、『無職』になっちゃったからタクシーにばかり乗ってもいられないし……これを機に、軽自動車でも買おうかな。 一応、運転免許は持ってるから」 今はすっかりシンちゃんのブリウスの「定位置」になっているけれど、うちの前栽の横には車一台分のカーポートがあった。 それに今日は土曜日だから、きっとシンちゃんには行くところがあったはずだ。 なのに、わたしにつき合って病院や警察にまでついて来てくれた。 ……これ以上、迷惑はかけられない。 「……櫻子、それ、本気で言ってる?」 その声が、わたしに向けては今までに聞いたことがないくらい()んやりしたものだったので、びっくりしてシンちゃんを見た。 ブリウスを運転するシンちゃんは前を見たままだったが、その横顔は怒っていた。 「し…シンちゃん、どうしたの?」
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