3.S E T I L I Y A

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「やっぱり、夢だったのかな」  時計を見ると、部屋を片付けてから小一時間程が経っている。鏡面世界に居た時間と同じくらいだ。  夢、だったのかな。 「ゴミ袋、飛んでるし」  夢じゃなかったかもしれない。  あらぬ方向に飛んでいたゴミ袋を拾い、玄関の外に置きに行く。  なんだか晴れやな気分で、軽々とした足取りの俺の横を、チェシィアさんが駆け抜けた。 「あ、チェシィアさん。外に出たいの?珍しい。ほれ、どーぞ」  庭もあるし、門閉まってるから大丈夫だろうと、玄関のドアをカリカリするチェシィアさんが外に出られるように、扉を開けてやった。  それと同時に外へ飛び出したチェシィアさんの口許に、手鏡のような物が見えて――。 「……まさかね」  俺は、首を横に振って浮かんだ想像を掻き消し、ゴミを捨てに行く。  心に浮かぶ月は、満月のようだった。
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