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全てを思い出した。
あの日、俺たちが近所の公園で身を寄せ合っていた時、誰かが来たんだ。
そして高校生の古賀さんを…見つけて…、見つけて乱暴に……っ
「はぁ…はぁ……っ」
胸が張り裂けそうになる。呼吸もうまくできない。
込み上げた酸っぱい物が口の中に広がる。
あの日古賀さんはあの男に蹂躙されて……っ。
そうだ。古賀さんはいつも身体のあちこちに痣を作っていた。
あの男は古賀さんの義理の父親…。
俺は見つからないように古賀さんに隠されて…一部始終を見てしまったんだ。
嫌だと泣きながら暴かれる古賀さんの若く細い身体。
白い肌のあちこちに殴られた痣以外の赤い印が見える。
俺は見つからないように両手で口を塞ぎ声を押し殺して見ていた。
やだ。やだ。やだよ。お兄ちゃん。お兄ちゃんっ。
もうわがまま言わないから…っお父さん、お母さん、お兄ちゃんを…助けてっ!
ガタガタと震えながら何度もなんども月で見ているという両親に祈った。
だけどその願いは届く事はなくて…。
男の吐き出した白濁で汚された古賀さんが月あかりの中、土の上に横たわっていた。
怖い。だけど…そんな古賀さんが……綺麗だと思ってしまったんだ。
ひどい目にあっている古賀さんの事が綺麗だと思ってしまったんだ。
小さかった俺にはいろんな感情を受け止める事ができなくて、記憶を封じてしまった。
ぽろりと流れる涙。
古賀さんの本当の両親も亡くなっていると聞いた。
義理の父親になったあの男は古賀さんの事を性的な意味で可愛がろうと引き取ったんだ。
義理とはいえ父親に汚される中、古賀さんは何を思ったんだろう。
古賀さんこそが月に居る両親が見守ってくれていると、そう思いたかったのかもしれない。
いつか助けてほしいと。
そう願って俺にその話をしたのかもしれない。
それなのに俺は…全てを忘れて……。
ぐっと握り込んだ手の平に爪が食い込む。
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