第1話 勧告

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第1話 勧告

――で、そういうことで、ごめんねミサちゃん。  そういうことって何? まだ、まったく納得してないのに、一方的に要件を告げられて、話は終わったとばかりに電話を切られた。  こいつはいつもそうだった。本来の自分の役割を理解してない。面倒ごとに成ると思考停止になって、相手の気持ちを思いやることができなくなる。  この業界の男はいざという時にまったく頼りにならない。  私はわざと忌々しそうにスマホをバッグにしまい、振り返って今出て来たばかりの巨大なビルディングを見上げる。  最後の頼みの綱は、図体(ずうたい)だけは立派だが、中身はウィルスという名の白蟻に食いつくされて崩落の危機に陥っている。  以前は誇らしげに見えていた『TAKAKURAYA』のロゴも、気のせいか色あせて見える。
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