第2話 遭遇

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 もう一人、見知った男がいた。グループの中で一番若そうなノッポの男だ。柴田に連れられて、一度だけ店に来たことがある。キャバクラは初めてのようで、最初に着いた私が頼むとすぐに場内指名してくれた。ラインもそのとき交換した。名前は確か東山春陽(とうやまはるあき)だった記憶がある。  不覚にも驚いた顔のままでいると、柴田と目があった。まずいと思ったが、柴田は何も気づかずに目を逸らした。まあ、今日は昼職用のメークだし、髪だって巻いてないから、気づかなくても不思議ではない。マリエさん以外には興味ないから、クィーンでもう一度会っても、忘れている可能性が高い男だ。  ホッとして、グラスの酒を一口飲むと、今度は隣から強い視線を感じて、再びそちらを向く。東山が絵に描いたような阿保面でこっちを見ていた。 ――しまった、こいつは覚えてたか。  無理もない、初めて話したキャバ嬢だ。しかもその日は私としか話してない。印象に残っても不思議ではない。
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