第1話 勧告

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 私の名前は森山美紀(もりやまみき)。百貨店大手高倉屋新宿店の婦人服売り場の一角を占める、アパレルショップ『アリア』の派遣販売員だ。登録しているIJBからアリアに派遣されて、二年が過ぎようとしている。アリアは二つ目の派遣職場だ。  派遣法という法律のせいで、同一職場への派遣は三年が限度となった。前の職場からは契約社員の話があったが、自由が無くなる気がして断った。  断れたのには訳がある。私はミサという源氏名で、キャバ嬢としてアルバイトしているのだ。  需要はそれなりにあった。週末はそれなりにお客さんも来て、女の子の数が足りなくなるから、数合わせに重宝された。客も数合わせと分かっているから、適当に接してくるので変な駆け引きで頭を煩わせることもない。客がいない日も、出勤するだけで時給が貰えるのだから、これほど美味しい話はない。  働く前は抵抗があったが、飛び込んでみると今しかできない、割のいいアルバイトだと思えた。  唯一気に成ったのは、職場の人間に知られることだったが、吉祥寺迄足を延ばしたので、心配が現実に成ることはなかった。
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