第1話 勧告

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 昼間と夜、両方働くことで、時間と体力は消耗したが、若さゆえかあまり気には成らなかった。時間があってもアパレル職場には、気に成るような男はいないし、女子的なヒエラルキーもめんどうで持て余していた。ましてや将来に向けて勉強する気には成ったことがない。  もちろん将来に向けた漠然とした不安はあるが、焦って考えてもどうなるものでもないし、ここ三年は、気ままな生活を謳歌していた。  それが一変した。コロナという名の性悪な悪魔が世界中に現れたのだ。通りから人が消え、当然のように売り場は閑散とした。それでなくてもアパレル業界は、販売員よりはるかに気安く専門知識を提供し、安く商品を提供するネット販売が、店頭販売を駆逐し始めていた。更にコロナの脅威がネットに追い風を向ける。勝負あったの感が強い。
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