第1話 勧告

4/7

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
 アルバイトはもっと悲惨だった。キャバクラの本場歌舞伎町では、クラスターと呼ばれる感染者の集団が続出し、世間から冷たい視線を向けられた。当然流動的な男たちは一斉に引いていき、営業は縮小していく。  吉祥寺も都内ほどではないにしろ、客層は大きく変わった。新規客はほとんど望めず、常連さんも回数を減らす。都知事が颯爽とテレビ画面に登場し、何の保証もない自粛を叫んでいる。私には死刑宣告のように聞こえた。  今日ついに、私にも店長から出勤調整が通告された。今まではこちらが出てやる的な立場だったのにと、立場の変転に唇を噛む。  と、まあ、悲惨な状況にあるわけだが、両親と同居してとりあえず生きていける保証があることから、マスコミの報道ほどは困っていない。  とりあえず、出勤前にご飯の約束があったので、吉祥寺に向かうことにした。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加