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彼に出逢ったのは、今年の一番最初の日。
背が高くて、一見、不愛想な容貌をしていたけれど、おずおずと僕に話しかけてきた様子からは、誠実で純粋な印象を受けた。
「好きです」
彼は僕にそう告白してきた。
そしてこう続けた。
「今日から1年間、あなたを好きでいる時間をください。1年間想って、貴方が俺に心を許すことがなかったら、俺は貴方を諦めます」
最近の高校生は、大胆な冗談を平気で言ってくるんだね。
と、僕は笑った。
「初対面の大人をからかっちゃいけないんだよ」
「冗談なんかじゃありません」
彼は真剣な眼差しをして言った。
「俺、本気です」
いつどこで僕を知ったのか、そんな事は見当もつかない。でも彼は僕の事を以前からずっと見てきた、と言う。
「本気で、貴方のことが好きなんです」
青天の霹靂とは、この事を言うのかな、とこの時は思ったものだった。
「1年…時間をください…。貴方を好きでいる時間をください…」
どうして。
はっきり嫌だと言えなかったのか。
彼の目があまりに真剣で、あまりに熱く僕を見ていたから、僕は拒む言葉をつむぐ事が出来なかったに違いない。
その日の夜から、彼は僕の部屋に、手紙を届けるようになった。
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