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01. 6月の午後
初夏の公園通り、新緑の葉を伝う
6月の雨に打たれながら
僕、原田清志は今日も
チェーンが錆びついた
壊れかけの自転車を漕いで登校している。
1年で一番嫌いな季節は?と問われれば
何の迷いもなく梅雨入りする6月、
そう答えるだろう。
元々バスケ部だった僕は
膝の怪我が原因で退部を余儀なくされ
今は帰宅部、
今日も退屈な授業が終わり
特にすることもなく駐輪場へ向かっている。
するとさっきまでやんでいた雨が
真っ黒な雲を引き連れて
再びアスファルトを濃いグレーに染め始めた。
「また雨かよ…ついてないな」
その時、ふと視界の向こうに
淀んだ雨空と対象的な
淡いクリーム色のレインコート姿を羽織る
一人の女子が視界に入った。
「あれ?あれって彩花じゃね?」
何で女子バスケ部の中本彩花がこんなとこに?
今日は練習ないのかな?
ー よし、ちょっとおどかしてやろう
僕はこっそり近づいて
「わっ!」
その小さな背中に大きな声をかけた
「きゃ~~~~!!!」
僕の声に驚いた彼女は腰が抜けたのか
へなへなとその場にしゃがみこんだ
「…え?」
「もう!何でそんなことすんのよ!」
「あれ?志帆ちゃん…」
てっきり幼なじみで同じバスケ部だった
彩花だと思って驚かせたその後ろ姿は
ただのクラスメイト、佐東志帆だった。
「ひどい!原田くん!」
志帆は激昂していた。
「ご、ごめんね志帆ちゃん、そんなつもりじゃ…」
「じゃ、どんなつもりだったの!もう怒ったんだから!」
「そ、そんなに怒らないで、ほら、あそこの自販機で…」
「やだ!私、ハンバーガーがいい!」
志帆を驚かせた代償は
意外と高くつくことになった。
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