新一と望

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新一は地獄のような闇の底に吸い込まれてゆく望の姿を見た。躊躇なく速度を上げて望を追う。 気づいた望は空中で目を見開き、息をのんだ。新一は腹の底から叫ぶ。 「望、死ぬなァァァ!」 ぐんぐんと地面が迫る恐怖が二人を襲う。新一は望に、望は新一に向かって手を伸ばす。 そして二人は空中で手を掴みとった。新一は望を引き寄せ抱きしめる。夜を背にして黒い影がひとつになる。新一は即座に身を翻えした。 「止まれエェェ!」 新一は翼を全開に広げ、地上に向けてジェットエンジンを噴射し、必死で重力に、そして運命に抗う。胸の中では望が震えていた。そして―― バサバサバサバサッ…… 二人は公園の植樹に突っ込んでいった。 どさり。二つの影が木の中から地上に落ちる。 それからしばらく、風の音だけがあった。 先に目を覚ましたのは望だった。気づくとあわてて起き上がり、横たわる新一にすがりつく。新一の翼はひどく損傷し、タイムリープベルトは砕け散っていた。 「新一、新一……なんだよね?」 すると、望の頭がそっと撫でられた。横たわる新一はうっすらと目を開ける。満足そうなほほえみを望に見せ、優しげな声でいう。 「望、待たせたな。やっとお前を救ってやれた……」
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