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エピローグ~Beyond The Paradox~
望はまた、いつものように工場へと足を運ぶ。ひたいの傷はもう癒えていた。
「この前は、怪我させてすまなかった」
望の顔を見るやいなや、新一は深々と頭を垂れる。
「ううん、もういいんだ。だって君には感謝しかないもの」
「はあ? 頭打っておかしくなったのかよ」
「もし僕がおかしくなって普通じゃなくても、友達は続けてくれるんだもんね」
「ん、まあ……そんなこと言ったような言わないような……」
照れて頬を掻く新一はそのことを覚えていないはずがない。望はくすっと笑って続ける。
「ねえ、お願いがあるんだ。空飛ぶ自動車を作る夢、諦めてくれないかな。それで僕と新しい夢を――」
望はそういって手にしたスマホを差し出した。映る写真に新一は瞠目する。
そこには屈託のない笑顔がふたつ、二十年の歳月を越えて煌めいていた。
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