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『親愛なる高崎 新一くん
どうか、これから僕が君に伝えることを信じてほしい。
君は空飛ぶ自動車の開発が夢だっただろう? けれど、それはけっして成功することはないんだ。それどころか、君は多くの人を巻き込む事故を起こしてしまう。
企業からの指示により、君はあと数年で空飛ぶ自動車をお披露目することになるだろう。たしか、「フライングキャブ」という名前だったはずだ。
君はそのフライングキャブを操作し都会の上空を飛ぶんだ。そして話題になったところで、企業が開発していた車だと発表する計画だった。インパクトがある方法に違いないよね。
指示を受けた時点では、機体はまだ完全とはいえなかった。それでも君は期待に応えようと、不眠不休で完成にこぎつけた。
けれど、無理をした代償は大きかった。機体は航空中、バランスを失って都庁のビルに突っ込んだんだ。
君はもちろん、この世から消えた。けれど、それだけで済むはずがなかった。都庁は崩れ落ち、東京は甚大な被害を受けた。
その「テロ行為」を実行したのは、気がふれたひとりのエンジニアだったと結論づけられたんだよ。そして、君は過去最悪の犯罪者のひとりとして死後も散々な扱いを受けたんだ。
僕が意識を飛ばして見た場面は、そんな凄惨なものだったんだよ。
でも、僕がそんなことを言っても君は信じるはずがないよね。だから、僕は自分の命を引き換えにして、君に信じてもらおうと思ったんだ。
それに、君がいなくなってしまうのは、僕にとっては死よりも辛いことなのだから。
ごめんね、君の夢を邪魔してしまって。
でも、今まで一緒にいてくれてありがとう。
そして、夢を失っても、どうか新しい夢を見つけてくれないだろうか。
河村 望』
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