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ラブソング 00.プロローグ
最悪な出会い。
そんなものはこの世の中には、たくさんありふれている。
一体どのくらいの恋人や夫婦が、そんな出会いの中で結ばれてきたのだろう。
最悪だと思えるものであったとしても、それが今は笑い話になるのか、少し苦い思い出になっているのか、それは俺にだって分からない。
でも、それでも今傍に居られることこそが、奇跡なんだ。
彼女との出会いもそうだった。
きっかけは、親父が持ち込んできたお見合い。
別に契約結婚でも、親の道具にされているわけでもない。
ただ会社の取引先の人と飲んでいるうちに、すっかり意気投合してしまい、自身に年の近い娘、息子がいることから話が膨れ上がってしまったらしい。
要するに、飲んだときのその場の口約束、ノリってやつだった。
それならそれで、本当にそうすることは、ないだろうと思うのだが、口にしてしまった手前、互いに引けないものがあるようだ。
そんなわけで大人の事情に巻き込まれて、俺たちは、出会うことになった。
大人の道具ではなく、玩具としてという意味でなら合っているかもしれないが。
30歳、泥臭い青春の始まりだった。
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