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ラブソング 01.スタート。
今の時代、ネットでだって出会える機会がある中で、お見合いをする人間がどれほどいるのだろう。
別に互いに、どこかの社長の娘だとか、医者の卵だとか、王族ってわけでもない。
ただの平社員、一般家庭における息子でしかなかった。
相手だってそうだ。
取引先ではあっても、本人たちの立場は、それによって左右されるものでもなかった。
「めんどくせえ、」
俺は、ホテルのトイレで鏡と向き合いながら、そんな言葉を漏らしていた。
それもそうだ。いくらただ飯といえど、出来るならこんな面倒なことに付き合いたくは、ないのが正直な気持ちだ。
それでも、ここに居るのは親父に懇願されたからだ。
最初は、弱気に頼むよ、なんて言っていたくせに、俺が動かないと分かった途端に、手のひらを返すようにして``例の話``を持ち出してきた。
今まで、反対してたくせによく言うよ。
俺は、内心、心の中で毒づいた。
そう、この見合いには、個人的にある条件が突きつけられている。
俺は、それを貫きたい、ただそれだけのためにここに居るんだ。
相手がどうだろうと、知ったこっちゃじゃないし、どうだっていい。
飯を食って適当に話すだけで、その条件が達成されるなら、それで良かった。
彼女に、出会う前までは、確かにそう思っていたのに。
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