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ラブソング 02.お見合い
ホテルのロビーにあるソファー、そこにゆったりと背を預ける。
親父は、既に指定されたレストランの中に居た。
最初は、一緒にいたものの1時間も前に到着した俺たちは、特に何もすることがなく、なぜか俺より緊張して落ち着かない親父を見ているのが嫌になって、逃げ出してきたのだ。
ただでさえ華やかで普段よりも居心地が悪いのに、あんな姿の親父を見ていなければならないのも、苦痛でしかない。
さっきは慌ててコップの水を倒していたし、落ち着かないと歩き出したら、店員にぶつかって、上着に染みを作っていた。
上着なので脱いでしまえば、分からないだろうが、染み抜きに行く言う店員に、是非にと上着を握らせていた姿を思い出す。
ああ、俺は、何かの修行でもやらされているんだろうか。
ため息をつきながら、そのままソファの上で目を閉じた。
地元でも有名なホテルなだけあって、ソファの座り心地は最高だった。
目を閉じれば、自然と意識も遠のいてくる。
このところずっと、眠れていなかったせいだ。
まあ、それというのも目的があるからなんだが。
そして今日は、その夢の一つがかかっている。
見合いのほうは、どうでもいい。
可愛かったら、付き合ってもいいし、友だちになる手もある。
まあ、でもそれもないか。
ただ、この場所にくる、それが俺にとっての優先事項だった。
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