2人が本棚に入れています
本棚に追加
ラブソング 06.そんなことある?
飲み屋で酔いつぶれた親父を迎えに行くと、この間の見合い相手の父親に出くわした。
しかもその男を迎えに来た娘は、俺がロビーでぶつかった女だ。
俺は、この状況に、少しだけ混乱していた。
女は俺のことを覚えていないらしい。
まあ俺だって、見合いが無事に行われていたら、忘れていただろうから、無理もないが。
だが女の態度は、前にあったものとは違っていた。
あの女には、似た顔の姉妹でもいるのか?
そんなことを考えていると、
「あの、タクシー呼んでもらえませんか?」
女が申し訳なさそうに、店主に言っていた。
あの父親の状態では、女一人で連れて帰るのは、無理だろう。
俺は、考えるのを再び放棄した。
どうしたところで、特に何かが変わるわけでもない。
店主が、ああ、はいと受け答えをしているところで、
「よければ、送りますよ?」
そう声をだしてる自分がいた。
女と店主が、一斉に俺のほうに振り向く。
彼女は、でもと言っていたが、
「どうせ、ついでなんで。」
と言うと、ではお言葉に甘えて、と俺の車に乗ることを了承した。
そうして二人して大の男を抱えて、店を後にする。
俺の勘違いの始まりは、思えば、そこからだったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!