44人が本棚に入れています
本棚に追加
ペットショップ
このにっきには極力マイナスなことは書かない様にしていたのですが、仕事で珍しく腹が立ったことがありました。
私は基本的に超超超楽観主義なので、大体何を言われてもスルーできるし怒ることって滅多にないのです。
ただ今回のことはちょっと見過ごせない問題というか、日本のペット業界の最大の問題点だと思うのでせっかくなので記しておこうと思います。
なるべく汚い言葉は使わない様に気をつけます。
初診の患者さんが来院されました。
6ヶ月の子犬で、先週ペットショップからご自宅に迎えたとのこと。
犬種はよく吠えることで有名なとあるわんちゃんです。
飼い主様は動物を飼うのが初めてとのこと。
診察の内容は健診だったのですが、飼い主様はしつけや飼育方法にものすごく悩まれている様でした。
私が腹が立っているのはペットショップです。
はっきり言って今回のケースは動物を飼うのが初めてで右も左も何も分からない飼い主さんに売っていい犬種じゃありません。
しかも犬の性格やしつけについて何の説明もなく。
セールだったそうですよ、大きくなってしまっているから。
命を何だと思っているんでしょうか。
ショップ内で何のしつけもされていない、社会化期をとっくに過ぎたよく吠える動物を、動物を飼ったこともない初心者の方がどうしてしつけができると思うのでしょうか。
遮音性の高いマンションにお住まいならともかく、住宅の密集したお家にお住まいの方が今後どういった悩みやトラブルを抱えるか想像もつかないのでしょうか。
せめて、幼稚園を紹介しておくとか、しつけ方法について丁寧に説明しておくとかなら分かりますが、そう言ったアフターフォローは一切なし。
これでしつけができず、飼育放棄が起きたらどうするのか。
ショップが引き取るんですか?
だれが殺処分するんですか?
私は避妊去勢手術を行う際にはその子が今後生きる15年ほどの人生において問題が起こらない様にものすごく気を使っています。
「手術すれば終わり」ではないんです。
その子の今後の人生に向き合わなければいけないんです。
そうではなく「売れば終わり」的な営業をしているから日本ではペットショップが叩かれるのだと思います。
私は絶対にこの動物を見捨てませんし適切な飼育ができるように徹底的に向き合う覚悟ですが、いくら私たちがフォローをしても、飼い主さんの心が折れてしまうことだってあるんです。
こう言った問題をどう考えて販売をしているのか聞いてみたいです。
動物愛護は非常にデリケートな問題ですので、皆さん様々な考えがあって当然だと思っています。
ちなみに私はペットショップ反対派で、可能な限り保護動物を引き取ってもらいたいと思っている人間です。
何なら日本のペットショップにおいては全て生体販売禁止の法律を作って欲しいと思う過激派です。
その結果飼育される動物の数が減って私たちが困ったとしたって構わないと思っています。
競争原理が働いてより腕のいい動物病院だけが残る様になるでしょうから。
そういう時でも生き残れる様に毎日腕も頭も磨いているんです。
ちなみに動物病院が患者さんを増やすにはショップやブリーダーと提携するのが一番楽なんですが、私は絶対にそれをしないと心に決めています。
たまにそう言った申し出の連絡が来ますが全てお断りしています。
それは販売した動物に異常が見つかった場合、変に提携しているとそちらに遠慮してしまって正確な診療ができなくなると思っているからです。
顧客獲得機会の損失につながる方針は動物病院経営者としての判断は失格かもしれませんが、経営者である前に獣医師でありたいんです。
動物愛護法もようやく少しずつ改正されてきていますが、環境省の動物愛護部会メンバーにはいまだにペットショップを経営されている方が在籍しています。
こんな会議で動物愛護の状況が良くなるわけありませんよね。
何がしたいのだか全くもって意味不明です。
で、まぁそれは置いておいて、私が言いたいのはペットショップで買うことが悪だと言っているわけではないのです。
そしてショップで購入した飼い主さんが負い目を感じる必要もないと思っています。(もちろん可能であれば保護動物を引き取ってほしいですが、今は目の前の動物を幸せにすることに全力を注いであげてください。そしてもし次に動物を飼う機会があれば保護動物に目を向けてあげてください。)
販売を行うなら、ショップ側が責任を持って購入時にきちんとした説明とアフターフォローを徹底するべきだということです。
私たちで言えばインフォームドコンセントを徹底してほしい。
コロナ禍でペットブームが起こった陰で、飼育放棄が増えているというニュースをみました。
非常に嘆かわしいことです。
安易にブームだなんだと報道をしないでほしいです。
数年前に猫ブームと報道された際、それまでは滅多に見なかった先天性の異常を持った猫がたくさん来院しました。
ブームになればタチの悪い生産者が喜びます。
沢山出荷(敢えてこう書きます)する為に、劣悪な環境で何の哲学もないブリーディングをされる動物が増えます。
マスメディアには有名人が買っている血統書付きの犬や猫、ペットショップで何十万円の犬や猫だなんて報道をしていないで、殺処分の実態や動物の保護活動をされている方々にもっとスポットを当ててほしいと心から願います。
読んでいてあまり気持ちのいい文章ではありませんでしたね。
お目汚し大変失礼いたしました。
それでも、皆様が動物愛護について考えるきっかけにでもなれば幸いです。
2021年5月7日 全ての動物たちが幸せに過ごせる日が来ることを願っています
最初のコメントを投稿しよう!