とびっきりの笑顔のために

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 お願いしますと殊勝に頭を下げる先輩に、まずはマネキンを使って三つ編みの仕方を教え始めたのだが、その時点で春樹の頭は混乱する。 「あの、右手の髪の束を真ん中に持ってきたら次はどうなるんだ??」 「もう一回やりますから、よく見て下さい」  河合の厳しい指導を受けること数十分、春樹はなんとか三つ編みのやり方を習得したのだが、それでも、バランスが悪いだの、編み方がゆるいだの、散々ダメ出しを受けている。今や、先輩の立場は形無しだ。 「お前、昔からこんなSキャラだったか?」「先輩がいけないんですよ。やめておけって言ったのに、自分でするって言うんだから。どうせなら、完璧主義とでも言ってほしいですね」  そう言いながらもどこか楽しそうな河合は間違いなくS気質だ。 「三つ編みは三つの束を終わりまで編んでいくんですが、編み込みは編むときに側頭部の髪を髪の束に少しずつ足しながら編んでいくんです」  河合は頭部のマネキンで実演しながら説明する。 「これが難しいんです。とにかく、三つ編みに慣れたら、少しずつ編み込みもやってみてください。とにかく、実際にするしか上達しようがありません。僕のところに昔使っていたマネキンがあるので、これを持って帰って、家で練習してください」  出されたマネキンを見て、 「なあ、河合、これ、どうみても生首みたいだよなーー」 春樹を河合は睨みつける。 「先輩!子どもみたいなこと言わないで、真面目にやってください」  叱られた子どもみたいに反省しつつも、春樹はマネキンを借りて帰ることにした。   
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