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ゆうき君が探しているものを見つけるために、詳しく聞いていく。
「ゆうき君が探している特別なジュースって、ゆうき君は飲んだことある?」
首を大きく振ってから
「ない! 特別だから僕は飲んじゃダメなんだって!」
この子が飲んでいけないのは、恐らくそれがアルコールを含んでいるから。
まともな親ならば、5歳の子供にアルコール含んだものを飲ませるわけがない。
「どんな見た目か覚えてる?」
うーん、うーんと頭に手を当てて考え始める。
アー、カワイイ、カワイイ、ナー
変な趣味に目覚めそうになっていると、ゆうき君が「あっ」と声を上げる。
「これくらい!」
手を大きく開いて示している。
だいたい、30cmくらいなのか?
「どんな色だった?」
「金色! それと、真ん中に赤色、後は緑!」
うん、分からん
子供と大して変わらない酒知識しかない僕では、分かるはずもないと考えるのをすぐに投げだす。それから、ゆうき君が言った内容をメモに残しておく。
そういえば、大事なことを忘れていた。と気が付いた。
本当に一番大事なこと。
百合の一件で知ったお酒の不思議な力。
百合のように、何か思いがあるのではと思ったのだ。
「ゆうき君、パパに何かあったの?」
すると、さっきまで元気いっぱいア〇パ〇マ〇!って感じの元気いっぱいだったのに、店に来た時以上に不安げで、悲しさに押しつぶされてしまいそうな表情になっていく。
くちゃっとなった表情のまま、僕に助けを求めているような視線を送ってくる。
「大丈夫?」
無性に頭を撫でてあげたくなった。
さっきは、欲望で頭を撫でたくなったが、今はゆうき君のために撫でてあげたいのだ。
そう思うと、腕が勝手に動き出していた。
小さな頭を優しく、優しくなでてあげる。
すると、段々とゆうき君の表情が緩み始め、泣き出さずには済んだ。
そうして、少し落ち着いたのか口を開く。
「パパがいなくなっちゃうの! だから、だから、パパの好きな特別なジュースをプレゼントしたいの!」
「ひぇ」
思っていたよりも、ハードな答えに変な声がこぼれる。
頭の中で、「いなくなる」理由を考えていると、ゆうき君はポケットからきんちゃく袋を取り出して、中身をレジカウンターに並べ始めた。
「僕の、おこずかい全部出すから! パパのジュースもってきて!」
並べられた、硬貨は一円や五円、一〇円ばかり。
硬貨はジャラジャラと山のようにある。
だが、それでも雀の涙ほどの金額。
これでは、どんな安酒も買えない。そもそも、子供は酒を買うことが出来ないし、どうにかしてあげたいけど、どうもしてあげられそうにない。
「買えないの?」
自分の考えが顔に出ていたのか、心配そうな顔で聞いてきた。
これ以上、この子の悲しい顔を見たくない。そう思うと口が勝手に
「大丈夫だよ! 僕に任せろ」
と発していた。
「お兄ちゃん、ありがとうね!」
子供の無邪気な笑顔を向けられて、罪悪感で押しつぶされそうに。
後で、泣かせちゃうな・・・
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