無冠帝

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「じゃあ、そろそろやるとしようか」 「は~い」  やろうとは言ったものの、今は日常的になっていて昔はそうでなかったもの。 それに加えて酒屋に関する何かいいものはないか…  「とりあえず、幅を狭めたいからどんなお酒が良いか教えてくれる?」  僕の問いに、たまきは少し考える素振りを見せる。 「写真映えするやつ!」  また、難しいのですね…『映え』ってよく分からないんだよな…最近の若者はすごいね~ 「そんなのあるかな…」 「天音さんは、すごく映える綺麗なお酒出してくれましたよ。お兄さんもそれくらいできますよね?」  たまきからの挑発に思わず、むっとしてしまう。 「僕だって、できらぁ!」 店に僕の声が轟いた。 「あんな大口叩くんじゃなかった…」  即堕ち二コマである。  かれこれ、一時間くらい悩んでいるがまだ見つかっていない。 たまきは暇すぎるのか、店をぐるぐる回り出している。  今回の「今は身近で、昔はそうでなかったもの」はいくらでも見つかる。 例えば、ワインはポルトガルの宣教師フランシスコ・デ・ザビエルが日本に最初にもたらしたと言われている。要は、戦国時代はワインなんて知られてさえなかったが、今では毎日のように飲んでいる人もいる。他にも、ビールは江戸時代に初めて渡ってきたから————— と色々考えは浮かぶ。でも、それはどこかこじ付けのようで、それでいて彼女の言う 『映える』がどうしても思いつかないのだ。と言うか、そもそも課題の内容があいまい過ぎるのだ。もっと、具体的にしてくれたり、限定的にしてくれたりすればもっと楽なのに………… 「お兄さん、まだ~?」   耐えかねて、僕の顔を覗き込んでくる彼女。 暇なら一緒に考えてよ! なんてドタキャンした手前言えない…  僕が答えないことが答えになったのか、たまきはまた店をぐるぐる回り始めた。 そして、そのうち適当にお酒を手に取って眺め始めた。 「割らないでよ~」 「子供じゃないんだから、そんな事しなーい」  そんな彼女の姿を見て、ふと考えが浮かんでくる。 「たまき、映えそうな瓶適当に色々選んで!」 「え、なにいきなり?」 「『映え』が難しいから、たまきが選んでくれたお酒に、理由をこじ付けすることにした」 「うーん? それでいいのかなぁ~」  人に任せっきりの君が言うことじゃないよね。 「そんなこと言っていたら、いつまでも終わらないよ」 「私はそれでもいいけど… 仕方ないね。分かった! 探す」 そうして、彼女が選んだ中から課題に適しそうなものを選ぶ。 彼女が選んだお酒の中には、インテリアとしても使えるお酒「花舞うリキュール」シリーずや赤と白で構成された日本の和を連想させる「今代司 錦鯉」と言うお酒など、結構な量を選んでくれた。これなら一つくらい使えるものがあるだろう。  そして、一つの水色でスタイリッシュな見た目の瓶に目が行く。 これなら… 以前、この名前の由来が気になって天音に聞いたことがあった。 その話は課題にぴったりだ。結局天音の受け売りになるが…この際仕方ない。 「決めたよ。今回は『無冠帝』のことをまとめよう」
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