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ロマネ・コンティ
「酒の大沢」
のワインコーナーは店の一番奥にある。
この位置は、店の中で一番外からの日差しを遮ることができ、さらに、空調が一番聞きやすく温度変化が少ない場所でもある。そんな特等席のような場所にワインたちは並べられている。理由は、ワインの保管が他のお酒に比べて非常に難しいから。
例えば、ワインは他のお酒と違い、寝かして保存するのが良いと言われる。
その理由は、コルクが乾くのを防ぐため。
瓶を立てて保存していると、コルクが段々と乾燥し収縮を始める。そうして出来た隙間から空気が少しずつ入り、ワインが酸化していき、本来の味を楽しめなくなる。
それを防ぐためにも、寝かすのは必須条件だ。
だが、いつだか天音が寝かさないほうがいいって意見もあるって言っていたから、本当はどれがいいのか、頭のいい誰か早く結論出してね☆
うちの店では今のところ昔からの言い伝え通り、棚板を傾けて固定し、寝かした状態で並べられている。そのせいで、置ける瓶の数がものすごく少なくなっているが、お客さんが少しで美味しく飲めるようにと思えば、色々な苦も嫌ではない。
またワインは日光に、ものすごく弱い。
少しの日光でもワインを極端に変質させ、『日光臭』と呼ばれる不快な臭いを発生させてしまう。それを防ぐためにも、店の奥は好立地というわけだ。
このように気を遣ってはいるのだがそれでも、もっと厳重に扱わないといけないワインも存在する。ワインと言うのはピンキリで、ピンは数億、キリは数百円と同じ飲み物でも天と地ほどの差がある。
数億の物は流石にうちには置いてないが、高いものだと数十万円のものが置いてある。それらを、少しでもダメにしてしまうと店の懐に深刻なダメージを受けてしまう。だからこそ、店の中でも特に高価なワインたちは特別な空間を与えられている。
特別な空間とは、ワインセラーの事で、簡単に説明すればワインの保管に最適な空間を作り出してくれる場所。見た目は、黒い小さな冷蔵庫のような感じだが侮ってはいけない。その辺の冷蔵庫なんかとは比べ物にならないほど、たくさんの機能が備わっている。
そんな冷蔵庫みたいなものは裏手の倉庫に置かれ、厳重にカギがかけられている。
そのカギは天音だけが持っている一本だけ。そのため、僕はその中身を一度も見たことがない。
彼女曰く、中には『二百万円』近くするワインが入っているらしい。
『二百万円』という途方もない額のワインの管理なんて、考えるだけで胃が痛くなる。
そんな管理を何喰わぬ顔でしている天音。彼女には一生追いつける気がしない…
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