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長々とワインについて語っていたのには理由がある。
先にあげた『二百万円』のワインを、買いたいと言う人が現れたのだ。
買い手は、この前僕とたまきのお祭りの予定をぶち壊した憎き…じゃなくて、店としては大変上客である、あの宴会場だ。どうやら、近々宴会場を盛り上げる企画として、『あの世界一高いワインが一杯、たった『〇万円』で飲める!』みたいなことをするつもりらしい。
で、その企画で使われる予定のワインが例の『二百万円』なのだ。
最近、少しはお酒に詳しくなってきたから、ある程度そのワインの名前に予想が付いている。でも、どうしていつ潰れてもおかしくないような酒屋にそれがあるのだろうか?
天音が配達を終えると同時に、店も閉店となった。
「天音さん、例のワインいつ出すんです?」
セラーの中を見てみたいのと、売る予定のワインが本当にあれなのか知りたくて、そわそわしている自分がいる。
「明日、昼のうちにぱっと出して持っていくつもり」
「へ、へぇ~」
おそらく昼の営業中に持っていくのだろう。そうなると…僕、一度も拝めないんじゃ?
「あ、あの…」
「言いたいことがあるならはっきり言え、っていつも言っているだろ」
「売る前に一度見せて欲しいです!」
「なんだそんな事か…分かったよ」
うきうきわくわくで、店の裏手へと足を向ける。
裏手の片隅にあるワインセラーは、中が見えるように正面がガラス張りになっている。
でも、寝かして保存しているため、ここからではお尻の部分しか見ることが出来ない。
わくわく、わくわく、わくわく
そんな視線で、カギが開けられるのを待っていたからか、「うざい」と一蹴されてしまう。
そうして、丁寧に取り出されたワインは僕の前に掲げられた。
「お前が見たがっていた、ワインだよ」
やっぱりそうだ。僕が思っていたワインで間違いない。
その名も『ロマネ・コンティ』。
世界一高い値段で取引されていると言われるワインの名前だ。
「何でうちなんかに、ロマネ・コンティがあるんです?」
先に浮かんでいた疑問をぶつけていく。
「今これがどれくらいの値段か知っているのか?」
「はい……確か、安くても150万くらいで、当たり年だと200万は余裕で超える…
あっていますよね?」
「ああ、そうだ。でも、オヤジが若かったころ、要は今から数十年も前はどうだったと思う?」
「もしかして…」
少し前に、天音からこんな話を聞いたことがある。
『魔王』と呼ばれる芋焼酎は少し前まで、ものすごい額だったらしい。メディアで報じられ、署名人が大絶賛、当時の景気もあって価格は高騰の一途をたどった。
そのため、正規販売価格の10倍近い値段で売られていた時期があったらしい。
今では、だいぶ落ち着いてきたが、それでも5倍近いプレミアム価格であるから『魔王』の人気の高さが伺える。
『魔王』の話はここで置いておくとして、つまりは、お酒の価格は人気で大きく左右されるということ。であるから、今でこそ鬼のような価格のロマネ・コンティも安い時期があったのではないだろうか。
「お前の予想通り、一昔前はケタが一つ違ったんだよ」
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