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些事
空洞。空洞を。
そこに在る暗闇が
いつの間にか猥雑な物事達に侵されていく。
いつの間にか空っぽではなくなっていく。
なくなっていくものたちを、惜しんでいる暇はなかった。
嫌いなものを好きなものに変えるのは容易いことだった。
夜、失ったものを数えて過ごす。
夜、愛しているものを数えて過ごす。
泣きながら、幾つもの夜を越えた。
それら全て無駄だったと思い返した、昼。
無意味なことで消費されて、私の思考消費されて、
それも無意味なことだった。
耳を揺らす音楽すら疎ましくて、
そんなの君には分からないでしょう、と叩きつけた、昼。
静けさを。
静けさは青色をしている。
思い出の中にしかない真っ青な空を、
いつまで経っても忘れられないままでいる。
伝わらない思いは無意味か。
私のまま、
何も見つめられない君たちの体温が肘に残っていてゾッとする。
ゾッとした浅はかさに安易に絶望して、
それでも私、私のまま、形を保っていなくちゃいけない。
なくならないで、なくならないでいて、私の中の空洞。空洞が無いと、遺すことすらできやしない。
どっかにいってしまえ、他人の声、私を曇らさないでいて。
「何も聞かなくていい、君の耳はそんなものを聞くためにあるわけじゃない、君の為だけに、君のその器官はあるんだ。」
耳を塞いで伝えたかった、何もかも違う、違う、君の中の空洞を見つめたかった、そこに在りはしない君の空洞。
君だけの空洞、ただ見つめて愛したかった。
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