汗ばむ季節に詩を

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汗ばむ季節に詩を

『汗ばむ季節に(うた)を』 哀しみを薄れさせて、うたに溺れる。 うたはぼくらを、取り巻いている。 君の耳にも。僕の耳にも。貴方の、耳にも。 いつだって届いている。 届いているものだ。 君の姿。後ろ姿だけ、覚えている。 僕の手のひらは、いつだって無意味で、届かないまま。被害妄想ばかり、膨らませていた。 いつだって。 いつだって僕は、 置いていかれたことばかり、考えている。 「後ろ向きだね。」笑った君を、 僕は一生許さない。 重たい言葉ばかり重ねた、 僕は一生許されない。 君の事を、嗤いたかった。 汗ばんだ首筋は夏の訪れ。 君の事、詩に出来たのは 君の事、忘れてしまいたいから。 嗚呼、哀しみよ、空に飛べ。入道雲に紛れて消えて、しまえ。 嗚呼、汗ばんだ。汗ばむ季節に詩を、捧げる。
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