独白

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独白

刺青を身体に刻んで、 悪者のフリをする。 空を見て胸が締め付けられること、 聖者のフリをする。 青。 君みたいに、まっさらで。青。 痛むのは何処なのか。 本当、はどこにあるのか、忘れてしまった。否、忘れているフリをしている。 甘い物を摂取する度、身体のどこかが 汚されていくような気分になる。 食べることが害悪のように思える。 偏食に育ちたかった、君の様になりたかった。 どこも痛くなんてないのに、何処かが痛むような気がしている。 どんどん足が地から浮いて、ぼくは天井からぼくを見ている。 ぼくの身体はどこにあるのだろう。 ぼくの、こころは。 いつか、いつか地に足をつけることが出来たのなら、 何かが変わるんだろうか。 ぼくは一体どこから君を見ているんだろう。 いつまで経っても、痛みを自分の物とは思えない。 ぼくは一体何者なんだろう。(名前とか所属とか表面的なものではなくて)概念として、何の為に(ぼくはぼくとして)ぼくの目を使って、世界を見ているのだろう。 「嘘をつくのは得意だよ。 と言う人間のどこを信用したら良いのか分からない。」 誠実な人間とは、君のことを言うのかもしれない。 夏の終わりに花火がしたかった。 不誠実な人間と関わって、交わって、心の在処を確かめたかった。 皆が皆、どうして平気な顔をしていられるの。 心の在処を知りたかった。 君の心は一体何処にあるんだろう。 ぼくが昔愛した人々は一体何処に消えてしまったんだろう。 どうして、愛することをやめたの? どうして、愛せなくなったの? どうして、心の何処からもいなくなってしまうの。 本当、が分からない。全て虚偽の様な気がしている。真っ当な人生を歩めば、皆の様に、同じに成れると思っていたのに、いつまで経っても皆の気持ちが分からない。分からないままだ。ぼくがどんどん剥離してゆく気がしていて、本当はこんなところに居たくないのだ、と声がする。 何かが聞こえる気がする。感情、思考、全てが偽物の様に思える。 まやかしだ。 どこも痛くない筈だった。傷つくことなんて何もなかった。 夏の間、君は居なかったし、 冬の間、貴方も、居なかった。 ずっと、ぼくも、居なかった。 ずっと、居るのは。 ずっと居るのは「私」だった。 狭い部屋、偽物の刺青を身体に貼りつけている私だけだった。
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