334人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと終わった……
これで全部終わった…。
智樹は達成感から疲れがどっと出て、大きなため息をついた。
さて、早見さんに電話して、迎え来てもらおう。
智樹が廊下の曲がり角を曲がると、
「わ‼︎」
そこには壁にもたれかかって立っていた早見の姿があり、智樹は驚きの声を上げた。
「早見さん…、もしかして、ここで待っててくれたんですか?」
まさか⁉︎と思いながら智樹が聞く。
「ああ。もし何かあって智樹君から電話があった時、すぐに駆けつけられるように、なるべく近くにいようと思って」
早見は智樹が無事に帰ってきた事に、安堵しているようだ。
「早見さん…。ありがとうございます」
いつもの智樹は雅樹のこと以外、利害関係でしか誰とも関わらず言葉を発さず、酷い事を思っているのに、今回の早見の行動は嬉しくて、智樹は本当の気持ちを言葉にした。
「本当に何もなくてよかったよ」
ふっと早見が笑う。
「早見さんは幸樹兄さんを、本当は信用してないんですね」
智樹も早見につられて、クスクスと笑った。
「幸樹の事は、昔から知ってるからね」
早見は冗談ぽく微笑む。
いつも真面目な早見さんも、冗談言うんだ…
智樹は初めて見る早見の姿に驚いた。
「もうすぐ夕食の時間だけど、まだどこかに行く予定はある?」
時計で時間を早見が確認する。
「幸樹兄さんのところで用事は全て終わりです。今日は疲れました。早く帰りたい…」
早く雅樹のところへ帰りたい。
智樹の顔に疲れが見え隠れしていた。
最初のコメントを投稿しよう!